I. 平成28年度の実績1. 保育学科単科短大として3年目を迎える現状 単科になることによって、財務は改善される方向にあったが、平成29年度入試において入学予定者が73名となり、予想していたレベルを下回ったため、財務状況は厳しくなった。
教員間での教育目的や教育方法の共有に関しては、カリキュラムの検討や学習成果の検討、学生に対する細かな指導の充実が図られている。しかしながら、平成28年度の1年生の退学者は8名に上った。さらなる情報共有と迅速な対応についての検討が必要である。
就職に関しては、求人数が多く、高い就職率を維持している。この傾向は向後数年間は続くであろうと思われる。
第三者評価は、平成28年10月に訪問調査があり、平成29年3月10日付で適格と認められた。
2. 建学の精神、教育目標、三つのポリシー
3. 18歳人口
平成29年(2017年)と平成42年(2030年)を比較すると16.0%の減少。単純に100名定員に減少率を換算すると約16名の減。ただし、この図は人口流入の予測値は反映されていない数値で、単純に年齢別の人口を拾った数値である。
4. 学生募集 入学者数推移(人)

過去3年間の保育学科入学者数を示したもので、28年度は前年度比7名減、29年度は14名減となっている。
過去5年間の主な市町村別入学者人数。

東松山、川越、坂戸、鶴ヶ島などが多い。鳩山はベスト10圏外となった。東松山からの入学者数は回復したが、特定の地域に限らず、全般的に人数が減っている。
資料請求数:オープンキャンパス参加者数:入学者数

平成24年度からのオープンキャンパス(年に10回前後)の参加状況と次年度志願者数をまとめたものである。年度や資料請求総数が変わっても、資料請求数に対する参加者人数や次年度志願者数の比は驚くほど一定である。対策としては、資料請求数を増やすことを目標とし、平成28年度は前年度よりも1割増しで資料請求があったが、それに対する志願者数の割合はやや小さくなった。一方で参加した3年生のうち、志願した人の割合は、平成27年度56%、平成28年度58%と増えており、オープンキャンパスに参加すれば、そのうちの約6割は入学しており、オープンキャンパスに参加してもらうことの重要性があらためて明確になった。インターネットの発達により、もしかしたら資料請求数とオープンキャンパスへの参加人数は以前ほどダイレクトに影響しあわないのかもしれない。今後は、ネットワーク広告の研究やスマートフォンへの対応動画配信などを充実し、オープンキャンパスへの動員数を増やすことを第一の目的とする。
5. 求人・就職
平成23年度からの求人票数の推移をまとめたものである。平成28年度の求人票数を見ると保育所、幼稚園、施設それぞれについてかなりの数に及ぶのがわかる。県内の保育所からの求人票数は昨年よりも減少したものの、県内県外の保育者に対するニーズは高いと言える。
昨今の子育て支援対策の不足から、保育所、幼稚園の求人のニーズは依然高いと言える。4月勤務の求人募集について3月になった今でも問い合わせがある。
なお、求人票数とは、求人票の数であり、求人数ではない。求人数は求人票数の数倍になると思われる。
6. 本学への評価(1) 就職先からの評価

就職一年目の卒業生に対する就職先の園長の評価である。出勤状況については、「たいへんよい」が78.3%になっており、前年度比では+7.8%と評価を上げている。
勤務態度については「たいへんよい」が63.8%であり、前年度比では0.1%評価を下げている。
幼児への関わり方については、「たいへんよい」が49.3%であり、前年度比で3.4%評価を上げている。
環境構成力については、「たいへんよい」が30.4%で、前年度比2.5%評価を上げている。
保護者への関わり方については、「たいへんよい」が34.8%であり、前年度比で1.3%評価を下げている。
他の職員との協調性については、「たいへんよい」が59.4%であり、前年度比10.2%評価を上げている。
全体的にこれまでになく高い評価である。実習を中心とした教科指導、普段の生活指導が実を結んだと考えられる。
7 その他(本学への要望等) 〈よいコメント〉
とてもよく頑張っています。子ども・保護者・同僚にもとても良く関わっています。成長が楽しみです。
まじめで仕事に対するひたむきさを感じます。
本人以外にも3名貴学の卒業生が頑張ってくれています。
意欲を持って取り組んでくれています。表情も明るく声もはきはきしているので大丈夫だと思います。
頑張っています。紹介ありがとうございました。
昨年に引き続きまじめで礼儀正しい学生で大変ありがたく思っております。
まじめに業務に取り組んでいます。
頑張っています。紹介ありがとうございました。
先輩と協調して業務に取り組んでいます。初めてのことでも臆することなく行っています。今後に期待しています。
〈要望としてのコメント〉
礼接、礼節を学ぶ機会があると良いと思います。
年齢に応じた子どもと一緒に楽しめる手遊び、ゲーム遊び等の準備。記録をとるという習慣(書くということになれる)
一人ひとり違うので良いところを伸ばしてあげてほしいです。
明るく元気なそして素直な心で何事にも一生懸命に取り組む学生の育成に期待しています。
〈その他〉
貴校卒業生さんが他1名勤務しています。いつも笑顔で明るく元気いっぱい園児にも人気の先生です。保護者への対応もとても丁寧です。
ようやく仕事の厳しさがわかってきたようですが、素直に受け止められると良いと感じています。園の方針をもっと理解していただきたい。
得意な製作活動を活かして行事に積極的に関わっています。他の卒業生も含め得意なことを活かす姿勢が見られ御校の指導のおかげだと思います。

就職した学生の評価について就職先の施設長が記述式のアンケートに回答したものをいくつかのカテゴリーにまとめたものである。
★の数は、指摘件数の量を示している(★ひとつ4件、☆ひとつ2件)。まじめで一所懸命に取り組む人、指示を聴ける人、子どもへ丁寧な言葉で優しく接することができる人などが求められていることがわかる。もちろん保育の知識、技術についても指摘もあるが、それ以上に社会人として備えておくべき基本的な事項について期待されているのがわかる。

卒業生自身が自分の状況について質問したアンケートへの回答である。すべての項目、「元気に通っている」、「保育の仕事は楽しいですか」、「職場の同僚のみなさんとの人間関係はどうですか。」について「はい、とても」の数値が前年度と比較して大きく下回っている。また、「ちょっと疲れている」が前年度と比較して高くなっており、自分の中では無理をしながら勤務している者が多い可能性もある。前述の施設長からのアンケート回答内容では非常に評価が高かっただけに、卒業生が短大を訪れることがあれば、フォローしていくのがよい。
自由記述欄からは、手遊び、ピアノ、製作物、書類の書き方など保育技術について、もっと勉強しておけばよかったという回答が多かった。
(2) 授業への評価

保育学科のすべての授業に対して、学生が5点満点で評価する満足度の調査結果の平均である。平成23年、平成24年と満足度が低い年があったが、平成25年から評価が上がり、平成28年は過去最高値を記録した。
(3) 学生満足度調査

短大全体について卒業生に対して行った満足度調査の結果である。「友人との出会い」、「自分の成長」、「就職」に関して80.0%を超える満足度である。
一方、「施設設備」、「授業」に関する満足度は相対的に低いものの、緩やかに上昇傾向にある。
「先生との出会い」については下降傾向が見られ、分析が必要である。
(4) 実習での評価

保育実習(1年生時に保育実習Ⅰ、2年生時に保育実習Ⅱを実施)に対する、園から学生への評価点の平均値を学年ごとに示したものである。評価項目の主な内容は、実習態度、保育者としての資質、指導力などである。平成23年度をピークに徐々に低くなってきていたが、平成26年度生、平成27年度生の保育実習Ⅱについては、平成21年度以来の最高値となった。平成24年度から定員を80名から100名に増員したことの影響や、評価してもらう園や評価者が年度によって違うことの影響が考えられたが、それらの要因を織り込んでも評価が上がったことは大きな成果である。

教育実習Ⅰ・Ⅱに対する園からの学生への評価点の平均値を学年ごとにまとめたものである。平成26年度生の教育実習Ⅱの点数が飛躍的に高くなり、平成27年度生についても高いポイントを維持している。教育実習Ⅰについては1週間の観察実習ということもあり、数値にばらつきがあるが、実習指導や保育内容などで新たな試みをしてきたことや、全体の授業改善等の成果が出て、前年度のレベルを維持している。
7. 行政の施策
資料は、埼玉県の子育て応援行動計画の一部である。埼玉県全体では、認可保育所や認定子ども園などで平成31年までに
1万8千人の定員増を行い、都市部の待機児童の解消を図るねらいである。県全体としては、定員増に伴う保育士の必要性も高まり、当然求人のニーズも高まると予測される。

一方、県内の短大周辺の市町村についての動きはどうか。短大近隣の市町村で、事業計画の素案が入手できたものについて、向後五ヵ年の子ども・子育て支援事業に係る園児数などの量の見込み及び確保の方策(人数)を調べてみた(下図)。

全体的に量の見込みが減っているにも拘わらず、確保の方策の数字はほとんど減っておらず、特に川越市などでは確保の方策の数字と量の見込みの数字の差が2000人以上にもなっている。これは、0歳から2歳までの待機児童数を解消するために保育施設の拡充をしなければいけない一方で、既存の幼稚園の定員を減ずる調整が事実上できないためだと思われる。したがって、確保の方策の人数は実際の園児数と乖離するため、量の見込みのみの数字によって判断するのがよい。
量の見込みからすると必要とされる保育士、幼稚園教諭の絶対数は減少する。実態として幼稚園、保育園の職員が不足しているのは、退職者数が多いことが要因として考えられ、今後保育園等の定員枠が増えるという追い風はなくなるものとして計画を立てていく必要がある。
II. 平成28年度の数値目標
